ルギアの心5

5章 新たなる戦い



さて、フラムは大忙しだ。やっと故郷に帰れる、嬉しい気持ちでいっぱいで今にも死んでしまいそうなテンションだ。しかしアージェは嬉しい訳がない。でも涙目になりながらもフラムに「さようなら」と言った。フラムは泣いてしまい、アージェに抱きついた。そんな光景をライは海上で観察していた。やがて、フラムは身支度を終え、海上にいるライに手を振った。いつでも出発可能だという合図だ。アージェは無言のまま、フラムに青い水晶の髪飾りを手渡した。お守りだ。
ライは海岸に近付き、フラムは飛び乗る。アージェは涙を拭きとるとフラムにほほ笑み、飛び立っていった。笑っていたけれど、内心はとても悲しい・・・。

・・・、

いくつもの渦潮の中を1匹の竜が進んで行く。派手に水飛沫を上げ渦をブチ破る、フラムは左右に振られる。
「場所はグルリル村で良いんだな?」
ライが波の音に負けまいと声を張り上げる。
「うん。それでOKです!」
フラムも声を張り上げる。
「うひゃあ〜、グルリルか〜7万㌔かぁ〜」
ライも流石に疲れる距離。船ならば3週間の航程だ。しかしライの最大ノットでも軽く8週間はいく。56日を海で過ごす。大変だが仕方ない。
作者も56日分の出来事を書くのは流石にシンドイ。省略する可能性大だ。
「ねぇねぇ、まだつかないの?」
フラムは尋ねる。もう疲れたようだ。
「まだ航海を始めて30分なんですけど」
ライはため息をつく。海で過ごしていると思う、時間が経つのが早いのだ。まぁ、陸と比べて結構楽しめるのだから時間が早く経つのも不思議ではない。あっという間に夕方が来て、夜になる。フラムはリュックに入っていたサンドイッチを食べる。そして寝る。そんな日が3日続く、4日目、この日も快晴。海は穏やかだ。
「いやな予感がする・・・。」
ライが久々に口をあける。
「いやな予感?」
フラムは理解できない。
「・・・、去年のこの時期には、グルリル行きの商船や輸送船団を数多くみかける。しかし今年は1隻も見かけない・・・。」
ライが海を睨みながら喋る。
「休日とか?」
フラムはのんきに聞く。
「いや、それはありえない。・・・、本当に嫌な予感がする。」
ライがそう言った途端、頭上を物凄い爆音響かせ、大型双発機が飛んで行った。翼に付けられたマークは黒い竜の紋章、「ライバッハ」。ここで始めて登場するライバッハ、グルリル村がある半島「シルフ」と敵対している。数十年前にも大きな戦争があったが勝負はつかず、結局講和で戦争が終了した。
(戦争がまた始まるのか、いや、そんな事はありえない!)
ライは戦争を全否定していたが、最悪な結果がライを襲う。
「号外!!」
叫びとともに1匹のオオスバメがフラムに新聞を投げ、ものすごいスピードで飛び去って行く。海上新聞配達員、最速の飛行獣のみが獲得できる仕事だ。これは伝達役にも使われたり、索敵にも使われる事もあるのだが・・・。
「海上新聞配達員?!なんでこんなものが今頃!?」
ライも驚く。さらに、
「シルフとライバッハの国境で戦争!!」
フラムが新聞に目を走らせながら叫ぶ。
ライバッハ軍がシルフの客船を攻撃沈没するという騒ぎがおきている。そこから戦争へと発展しだ。
「くそっ!フラム、お前の故郷も巻き込まれたようだ!一気に飛ばすぞ!」
ライが叫ぶと、体が青白く光り出す。
「え?え?何?」
フラムは首に抱きつく。
「時空を超えてワープする!使いたくなかったが・・・。」
ライはそう言うと、体を屈める。
「ああ!幻の大地みたいな感ッ・・・・・・・・」
フラムは台詞を最後まで言えぬままワープ。




故郷はどうなっているのか・・・・?